★日本の税制はここ数年で大きな転換点を迎えています。
特に「高額所得者への最低税負担」と「相続税・贈与税の改正」は、多くの方に直接影響を与える内容です。
今回は、その概要をわかりやすく整理しました。
■1■ 個人所得税:高額所得者への新たな「最低税」制度
2025年から導入される新ルールでは、収入が極めて高い個人に追加的な税負担が課されます。
ポイントは「最低限これだけは納めてください」という基準ができたという点になります。
≪計算方法≫
* 基準税額 = (年間収入 ? 3億3,000万円)× 22.5%
* 通常の所得税額 と比較し、基準税額の方が大きければ、
その差額を追加で納税
≪ケース≫
* 臨時所得:30億円(キャピタルゲイン)
* 通常の税額:約4億6,000万円(15.315%課税)
* 基準税額:約6億円
? 差額の約1億4,000万円が追加納税に。
つまり「所得が極めて大きい場合には、税率で計算した金額だけではなく、最低ラインに届くまで追課される」仕組みです。
この規定は非居住者にも適用される点が特徴的で、株式売却など日本課税対象の所得を得る場合にも影響します。
■2■ 相続税・贈与税:2024年からの改正点
相続・贈与についても、すでに2024年から改正がスタートしています。
主な変更は以下の通りです。
1)相続時精算課税の特例拡充
* これまでは2,500万円の特別控除が上限
* 改正後はさらに110万円の控除が追加
? 贈与を受けても、年110万円までは課税なしに近い取り扱いに。
2) 相続前贈与の加算期間延長
* これまでは「亡くなる前の3年間」に受けた贈与が相続財産に加算
* 改正後は7年間に延長
* ただし、3年超~7年以内の贈与については100万円控除が設けられる
3) 適用開始時期
* 上記改正は2024年1月1日以降の贈与から適用
■3■「個人ミニマムタックス」VS.「グローバル・ミニマムタックス」
さて、上記の2.は個人所得税における最低課税ルールで、『個人版のミニマムタックス』と位置づけられるものですが、いわゆる国際的な『 法人版グローバル・ミニマムタックス』(OECD/G20のBEPS Pillar2 = 法人税15%最低課税ルール) とは別の制度になります。
対象も趣旨も異なります。
■4■ SUMMARY
*2025年以降、超高額所得者は「最低税額」により追加負担が発生する可能性があります!
*2024年からは、相続税・贈与税の控除や加算期間が大幅に見直しされています!
*今後の資産形成や相続・贈与の準備にあたっては、これらの新ルールを前提にした対策が必要です!
*今回の「個人最低税」= 個人版の国内ミニマムタックスは、国際的に議論されている
「法人版グローバル・ミニマムタックス」= 多国籍企業向け法人税の最低課税名前や考え方は似ていますが、対象も趣旨も全く別物になります。
Writer /Kiyomi Kindaichi/金田一喜代美
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