★産業用ロボット(出所:by StarsInsider
Bioinspiration: how nature is helping us innovate(msn.com))
前回から“GEPAS biz letter”で取り上げているグローバル・ミニマム課税。
OECD/G20の「BEPS包摂的枠組み」において合意された制度で、次の3つのルールから構成されています。
①.所得合算ルール(IRR: Income Inclusion Rule)
②.軽課税所得ルール(UTPR: Under-taxed Profits Rule)
③.適格国内ミニマムトップアップ課税
(QDMTT: Qualified Domestic Minimum Top-up tax)
このうち所得合算ルール(IRR)は、令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税について適用することとなっております。
では、他の2つのルールについてはどうか?
■第1回 軽課税所得ルール(UTPR: Under-taxed Profits Rule)
■第2回 適格国内ミニマムトップアップ課税
(QDMTT: Qualified Domestic Minimum Top-up tax)
第2回目の本日は、「適格国内ミニマムトップアップ課税」についてです。
■1■.適格国内ミニマムトップアップ課税ルール
(QDMTT: Qualified Domestic Minimum Top-up tax)
(1)概要
多国籍企業グループ等に属する会社等について、その所在地国における実効税率が15%の最低税率を下回る場合に、当該所在地国においてその税負担が最低税率に至るまで課税する制度です。
所得合算ルールや軽課税所得との違いが分かりにくいですが、例をあげると次のようになります。
<例>
日本に親会社、パナマに子会社がある。パナマは法人税率0%のため、何のルールも適用しないと課税ゼロ。
日本:所得合算ルールを適用してパナマ子会社の所得に対して15%課税しよう。
パナマ:法人税0%であるが、当ルールを適用して子会社に15%課税しよう。
要するに、軽課税国にとっては「他の国に課税されるくらいならうちの国で課税する」ということですね。
(2)目的
多国籍企業グループ等の利益移転戦略により適切に課税されていない所得に対処し、適正な課税を逃れることを防ぐことを目的としています。
(3)適用範囲
連結グループの収益が7億5,000万ユーロを超える多国籍企業グループ等に適用されます。
<多国籍企業グループ等のイメージ(再掲)>
(出典:国税庁「グローバル・ミニマム課税への対応に関する改正のあらまし」)
(4)他のルールとの関係
適格国内ミニマムトップアップ課税による課税額は、所得合算ルール又は
軽課税所得ルールの計算上控除されることとなるため、他国の所得合算ルール又は
軽課税所得ルール課税を減殺する機能があります。
わかりにくいですが、表にすると次のようになります。
繰り返しになりますが、軽課税国にとっては「他の国に課税されるならうちの国で課税する」ということですね。
(5)日本における導入
軽課税所得ルール同様、令和7年度税制改正以降の法制化が検討されています。
そこで必要とされる提出書類ですが、以下のものが予想されます。
a.ローカルファイル
国外関連取引における独立企業間価格を算定するための詳細な情報
b.国別報告事項
多国籍企業グループの事業活動が行われる国又は地域ごとの収入金額、 税引前当期利益の額、納付税額、資本金の額、利益剰余金の額、 従業員の数、有形資産の額、グループ会社の名称・居住地国等を記載
c.事業概況報告事項(マスターファイル)
多国籍企業グループの組織構造、事業の概要、財務状況等の グローバルな事業活動の全体像を記載
本日は、BEPS2.0 第2の柱「適格国内ミニマムトップアップ課税」についてでした。
GEPAS bizでは、これからも適宜、本テーマについて情報を発信していきたいと思います。
★★ 人類の夢の実現 vs. Taxation ★☆彡
(アマゾンのドローン技術:See:WERT
GARANTIE Amazon Drohne: Alle Infos zur Flug-Lieferung und Prime
Air (wertgarantie.de)
冒頭の写真は産業用ロボットです。
産業用ロボットの進化は、今では世界の労働人口減少の多くをカバーしています。
真夏の工事現場でロボット犬が労働してくれることや、ドローンが食料品を家に持ち帰るというクレイジーなアイデアが夢だったのは、それほど昔のことではありませんでした。いつか現実になるかもしれない。
そうワクワクしていたのも束の間で、すでに社会実装が始まっていますね。
アマゾンでは、その夢のドローン・プロジェクトをテストするのに十分な資本(2022年に4,698億米ドル)がありました。
いま、世界の各社ではその技術力の競争が激化していて、ノウハウは高価な無形資産として価値を持ち始めています。
さらに近年のデジタル経済の進展に伴い、無形資産の価値は、企業経営や財務において非常に重要なトピックとなり、『知的財産権、ブランド、特許、ソフトウェア、データベース、ビジネスモデル、顧客リスト』など、目に見えない資産が企業価値の大きな部分を占める時代になりました。
ますますこれらの資産の誕生や活用が企業戦略の中心になっていくと予測されています。
★~BEPS2.0は、100年に1度の税制大改革!?~★
このような無形資産の評価は非常に複雑です。
なぜなら、無形資産は物理的な形を持たず、評価が主観的で変動しやすいので、課税時や移転価格の評価も難しく、国際税務の分野では特に課題が多いからです。
例えば、多国籍企業が税率の低い国に無形資産を移転し、その国での利益を最大化する手法を用いることがあり、これが各国の税収に影響を与えることにつながるのです。
そのためOECDの「BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクト」で規制を強化はじめました。
さらに、昨年から始まった『BEPS2.0』の第1の柱(amount B)では、無形資産に対する移転価格の税制ルールに変更が加えられています。
そして、今回のnews letterで取り上げた第2柱の数々は、続々と日本に上陸しています。
★ロボットやデジタル技術が進化していくにつれて、もしかしたら人類はさらに壮大な夢を見始めるかもしれません。
医療分野では命を蘇生させたり、深宇宙や深海探索では新物質を発見し、日常生活のパートナーとしてもロボット技術が生かされる時代がくるかもしれません・・。
未来には、私たちが想像もしないような新たな可能性が広がっているでしょう。
人類のロマンは、効率や便利さを超えて、人間の想像力や希望、そして無限の未来を見つめます。
こんな風に、技術はロマンとして私たちの暮らしや社会に大きな変革をもたらす夢の具現化であり、進化し続ける物語の中で重要な役割を果たし続けるのです。
しかし、同時に経営においては別の側面も見なくてはならなくなりました。
人類の“ロマン”が現実化され利益となり始めると、おそらく課税制度もその両輪として廻りはじめ、・・これも 国際的に“現実化” されていくことであろうと言うこと、をです^^
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