★法人が海外に不動産を購入・保有・売却する場合、どのようなスキームがあるのだろうか。
最近の流行りのスキームと、それにまつわるリスク。
前回に続いての2回目を法人編として伝えいたします!
NO.2
法人で海外不動産を 購入・保有・売却する場合のスキームとまつわるリスク
■1■ 法人で所有する
個人で所有した場合は税率は高くなる可能性はあるものの、スキームはいたってシンプルです。
そして、法人で持った場合も税率が一定なので数年の税額コントロールがし易く、相続対策の一助にもなります!
しかし、法人だと両国で法人税申告が必要などの維持コストがかかります。
さらに、課税側でも注目する視点が増えます。
たとえば、CFC税制(軽課税国にあるペーパーカンパニー課税)や過少資本税制、はたまた移転価格税制まで。。
実際に現地管理や賃貸事業をしていない等のような場合は、租税回避とみなされて全額否認のリスク要素は増えます。
なので十分な検討が必要になってきますね。
■2■ 法人スキームの種類
法人で外国不動産を所有することについて
次の1.~5.の類型をあげてみました。
それぞれのスキームについて
A. 節 税
B. メリット
C. リスク
のポイントを簡単に記載します。
1)海外法人を設立し、その法人で不動産を購入
A.
・相続時に不動産そのものではなく「法人株式」として評価できる
・評価減により相続税軽減できる
B.
・相続税上の圧縮が期待できる
・現地での融資や経営自由度も確保可能
C.
・日本のCFC税制(タックスヘイブン対策税制)適用の可能性がある
・実態のないペーパーカンパニーは否認リスクが高い
・現地法人設立・維持コスト負担増
2)日本法人を経由して海外不動産を購入
A.
・法人税実効税率(約30%)で課税
→ 個人の最高税率55%より低くなる
B.
・累進課税が回避される
・役員報酬や退職金で利益分散が可能になる
・減価償却の税務制限がなく通常にとれる
C.
・現地に法人設立届、現地法人税が必要のため維持コストと管理負担が増える
・出口戦略次第では逆に税の負担増
・課税側からは「同族会社の私的利用」とみなされるリスクがある
3)海外法人を親会社、日本法人を子会社とする持株スキーム
A.
・タックスプランニング(低税率国でキャッシュフロー留保)
B.
・国際的な資金移動の柔軟性
C.
・租税回避地利用とみなされるとCFC税制で合算課税
・OECD BEPS対応や情報交換で透明化進行中
4)ファンド・SPC(特定目的会社)を利用
A.
・投資家資金を集め、法人格を通じて不動産保有
B.
・税務的に透明化スキームも可能
・リスク分散ができる
C.
・スキームが複雑化し、税務署の目も厳しくなる
・SPCの実態・会計処理が不十分だと課税リスクがある
5)不動産保有法人の株式を売却(シェアディール)
A.
・不動産そのものの譲渡ではなく株式譲渡
→ 登録免許税・不動産取得税を回避
B.
・日本国内でもM&Aとして一般的な手法となってきた
・相手方の同意が得られれば税コスト削減
C.
・買手が法人の過去債務・リスクも引き継ぐため、
・相場より値引きされやすい
・租税回避目的とされると課税庁から否認リスクがある
★ シェアディールについて ★
近年増えつつあるシェアディール(株式売却)方式ですが、このスキームですと株式の売却取引になりますので不動産の「登記名義」は行われません。
このため 不動産譲渡課税も原則は発生しません。
このスキームでは「株式譲渡益課税」(売主の国で)だけが発生します。
しかし、アセットディール(会社分割含む)方式にすると不動産の「登記名義」が変わるので不動産譲渡課税が発生します!
米国では FIRPTA 源泉課税の対象になるケースもあります。
⇒このようなことから・・
米国課税を回避するために株式レベルで取引(シェアディール)を利用するケースが多くなっています。
■3■ 海外不動産スキームの実務評価マトリクス
次に2.の節税スキームを≪実務上の有効性≫と≪リスク水準≫で整理し、評価マトリクスを(〇△×)で作成しています。
〇:実務的にまだ有効に使える(条件付き)
△:一部状況では有効だがリスクや制約が大きい
✕ :現在はほぼ使えない・リスク過大
= Note =
1.日本法人化スキーム2)、SPC4)は、実務上まだまだ有効ですが、コストや実態運営の要件を満たすことが必須になります。
2. 海外法人単独保有1)や低税率国持株スキーム3)は、ほぼ過去の手法になりつつあり、現状では税務否認リスクが非常に高くなっています
3.株式売却5)はM&Aの世界では一般的で、有効に機能しますが、税務メリット単独目的だと否認されやすいところがあります。
★NO.3では「海外不動産による有効な相続対策」を考察します。
=Editor's Note= 『LEPON COMET』
2025年10月21日 からはじまる 「レモン彗星」
★「一生に一度」の緑色の輝き、レモン彗星が10月に地球最接近 ★☆彡
彗星、流星群、オーロラの共演の期待もできる?
今年1月に米アリゾナ州のレモン山天文台の観測で発見された新しい彗星です。
(https://www.study-style.com/seiza/calendar/topics/2025/1021.html)
太陽系への接近は、直近で1396年前(なんと7世紀のこと)。
天文学者らの試算によると、次に太陽系に戻ってくるのは西暦3421年になるという。
・・・まさに「一生に一度」の彗星?
地球に最も接近する10月21日前後が最も明るく輝き、太陽への最接近(近日点到達)は11月8日で、その頃まで観測できる可能性がある。
地球最接近日の10月21日は、新月と重なるだけでなく、オリオン座流星群の極大日にも当たり、1時間に最大20個の流れ星も出現すると見込まれてます。
さらに、10月はオーロラの出現率が最も高い季節の一つでもあり、地球の磁気活動が活発化すれば、高緯度地域ではオーロラと彗星の共演も見られるかもしれないらしい^^。秋の空を望遠鏡でながめるのも楽しいかもです。
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